障害を抱える老齢年金受給世代の検討事項 | 年金相談オフィスKAJU|京都市南区の社会保険労務士事務所

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障害を抱える老齢年金受給世代の検討事項

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こんにちは♪京都の女性社労士、年金相談オフィスKAJUの木村です。

今日は、現在特別支給の老齢厚生年金を受給しており、まもなく65歳を迎える方からのご相談について。
業務上の傷病(Bとします)でここ数年間、労災の休業補償給付を受給しておられましたが、医師が軽作業は可能と診断したことにより、つい最近休業補償給付は終了することに。ただ体調が回復したわけではなく、B傷病以前から患うA傷病(私傷病)もあって、休職は続いておられるので、A傷病で健康保険の傷病手当金を受給できないか、とのこと。現在も職場の社保に加入在席中で、のちのち雇用保険の基本手当を有利に受給するために、65歳前に退職も考えておられるとのことでした。

(相談者独自の状況)労災/休業補償給付と、健康保険/傷病手当金

冒頭申し上げたように、障害のある老齢年金受給世代の方は、社会保険の様々な制度が関係してくるので、非常に検討を要するところ。
A傷病で傷病手当金の条件に該当するとして、受給期間は最長1年6ヶ月。過去に遡って1年6か月分を請求することも可能ですが、それでは労災の休業補償給付と重複してきます。
通常この2つの制度は、片や業務上(労災・休業補償給付)、片や私傷病(健康保険・傷病手当金)相反する内容ですので、1つの傷病であればどちらかになりますが、今回は別傷病による別件ですので並立する場合もあり、その際は制度上、併給調整(どちらかしか受け取れないような制限)を、健康保険の傷病手当金側で受けることになります。

この2つの制度を重複受給するケースは、協会けんぽ側でも過去に誤って支給する事例が目立ったようで、会計検査院からの指摘を受けた資料があり、けんぽ各支部に対し、改めて取り扱いの徹底、適正な事務処理指示がなされたようです。

併給調整しても、なお調整される側の金額(傷病手当金)が高ければ、差額は支給されるのですが、
労災の休業補償給付は給付基礎日額の(6割+特別支給金2割)8割支給に対して、傷病手当金は平均標準報酬日額の2/3ですから、多くの場合は重複期間を申請しても支給余地はありません。(実際の金額の比較が必要です)

年金世代を取り巻く制度のあれこれ

それでは未来に向かっての申請はどうか。最近、休業補償給付が終了したとのことですので、そこから健康保険の傷病手当金に切り替えて申請すれば良いのですが、雇用保険の基本手当を考慮して、まもなく到達する65歳前に退職を予定しておられます。退職後に受け取る傷病手当金については、今度は老齢年金と調整されてしまいます。
65歳前後の老齢年金額と、傷病手当金を比較して、傷病手当金に差額があればその分の受給は可能です。

また雇用保険の基本手当を考慮して、65歳前に退職するとは(内容は割愛しますが)一般的によく言われるところ。一部の精神障害あるいは身障者手帳をお持ちなら、65歳前の退職者への給付は就職困難者として、更に手厚い給付日数(360日)の対象になります。基本手当の延長手続きをして、働けるまでに体調が回復してから受給可能です。

老齢厚生年金の「障害特例」

もう少し時間的な余裕があれば、65歳前に受給する特別支給の老齢厚生年金には、「障害特例」という制度もあります。「退職していること」と「(初診から1年6ヶ月は経過して)3級以上の障害状態」であることが要件ですが、厚生年金加入歴20年以上、さらに所定の配偶者がおられると、障害年金よりも有利なことが珍しくありません。この障害特例は老齢年金の制度ですので、65歳前の老齢年金と雇用保険の基本手当は調整対象(65歳以降は調整されません)ですが、年金と基本手当を両方受けたい場合、「障害年金」の受給権があれば、障害年金は基本手当と調整規定がありませんので、65歳前は障害年金を選択して受給することができます。

ご相談者の選択

ご相談者の場合、障害年金は未申請。障害年金も、同一事由での傷病手当金とは調整対象ではありますが、これまで障害年金を申請しなかったのは、医師が「(年金も身障者手帳も)診断書の類は書かない」という頑なな対応だったためだと。障害年金の(事後重症)請求は65歳前々日までに申請する必要があり、もしこれから診断書を書いて頂くために転院をしても、新しい医師もすぐには診断書を書けず、間に合いません。

さて困難な状況の中、それでも何とかして障害年金を申請する価値はあるかどうか。年金はひとり一年金、老齢と障害であれば、選択が必要です。(65歳以降は障害基礎年金と、老齢厚生年金の併給は可能です)
障害基礎年金は(2級の場合795,000+年金生活者支援給付金61,680円/年)障害状態に該当する限り、終身支給されるものですから、老齢基礎年金が満額(795,000円/年)に不足なほど、障害基礎年金を選択するメリットは高まります。
この方には配偶者(夫)がおられますので、更にご夫婦の年金受給状況を考慮しなければならず、加給年金(397,500円/年)を受給できるような年上の夫(厚生年金加入歴20年以上)に対して、仮に65歳前の妻が障害基礎年金を受給すると、夫の受け取る加給年金は支給停止ですので、ご参考まで。

妻65歳以降、1階部分国民年金として、老齢基礎年金と障害基礎年金のうちどちらか選択しなければなりませんので、障害基礎年金を選択受給すると、老齢基礎年金プラスそれに付随する振替加算(夫の厚生年金加入歴20年以上、妻は20年未満の場合。金額は生年月日による)が支給停止になります。
その他にも年金の選択には、税金面の検討が必要な場合もあります。

結局この方の場合は、障害基礎年金に金額的に分がありましたが、時間的にも間に合わず申請は諦め、代わりに65歳前に退職して、傷病手当金と基本手当を最大限受給することにしました。退職後の傷病手当金は老齢年金と調整対象ですが、それも老齢年金を繰り下げすることで回避可能で、満額受給のためにその選択をなさいました。


このように障害を抱える老齢年金受給世代の方は、時間的な制約と、その方の年金記録によって最適な選択をする必要がありますが、それには年金全般、関係する社会保険制度に対して精通していないと、中々検討できません。
端的な説明を優先し、一般の方には内容の理解は本当に難しく伝わらないことと思いますが、検討しなければいけないことが非常に多くあるのだということが伝われば、まずは良いかと。実際のご相談では、その方のケースに応じて、嚙み砕いてご説明差し上げます。


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