DV被害者の年金手続き part2
DV被害者の遺族年金請求
こんにちは♪京都の女性社労士、年金相談オフィスKAJUの木村です。
さてpart2。DV被害者の遺族年金については、注意が必要です。
ご相談者は既に70代で年金受給中の奥様。夫のDVでこの数年間、他府県に避難。弁護士に相談するも「証拠不十分」「立証困難」のため、離婚は諦めてのらりくらりと婚姻関係を続けるべき、と。
夫は別居後も生活費を入金はしてくれたが、仕事を辞めてからは借金があるようで、入金が途絶えたとのこと。
このような状態で夫に先立たれた時には、ご自分は遺族厚生年金を受け取れるだろうかというご相談でした。借金については相続放棄する場合も、遺族年金は相続財産ではないので関係なく受け取れます。
「生計維持」それが問題
遺族年金は亡くなった方と、遺族年金を受給する方双方が条件を満たす必要がありますが、
(詳細は 日本年金機構「遺族厚生年金ガイド」)
https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03-3.pdf
中でも残された配偶者(DV被害者)は、亡くなった方(DV加害者)に死亡時点で「生計維持されていた」ということが求められます。
この点で、DV被害を受けていた配偶者は苦労されるかもしれません。
(DV被害のために別居されていた場合の遺族年金の請求手続きについて)
https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/0212.pdf
「生計維持」とは、死亡当時、死亡した方と同居して、同一の家計で生活していること。
または一時的な理由(単身赴任、就学、病気療養等)から別居している場合も、
生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること。
定期的に音信、訪問が行われていること 等が求められます。
(生計維持関係等の認定基準及び認定の取り扱いについて
「年発0323第1号(平成23年通知」)
今回のご相談者のように、DV被害者は身の危険を感じて一時別居状態、
事情が事情だけに生活費の仕送りなどが望めない場合が考えられます。
この点について厚生労働省から、「DV被害者に係る遺族年金等の生計同一認定要件の判断について
(令和3年年管管発0901第1号)」という通達が公表、令和3年10月から適用されています。
こちらによると、DV被害者でやむなく別居をしているという事情を勘案して、
生計維持を判断するのは、死亡した方(DV加害者)の死亡時という一時点だけでなく、別居期間の長短、別居の原因やその解消の可能性、経済的な援助の有無や定期的な音信・訪問の有無等を総合的に考慮して、判断するとのこと。
保護施設等からDV被害者であることの証明書が発行されていたり、DV被害者として秘密保持のために基礎年金番号が変更されている方等が対象です。(DV被害者であるかどうかの判断は日本年金機構が行うものではなく、裁判所や支援機関等が発行する証明書等を通じて確認、判断、認定されます)
ただそのような方であっても、一時的な別居と言えるのは5年程度で、それを超える長期間、経済的な援助も、音信も訪問も無い状態が固定化しているような場合については、認めるとは限らないとしつつも、そこは個別に判断しますよと、含みを持たせています。
今回のご相談者には概ね5年という基準、それまでに問題解消できるか。
また「経済的な援助」の証拠として、例えば現金の手渡し等ではなく、後から確認できるような形(夫婦だからこそなされるような、相手の名前での銀行振込や各種入金、契約等の書類の保管等)を意識すること。また音信・訪問についても、手帳/日記等に克明に記すなど、今から準備しておくのが良いとお伝えしました。
過去に遺族年金を受給できないとされたDV被害者
二つ目のリンク(DV被害のために別居されていた場合の遺族年金の請求手続きについて)のPDF資料最後に「過去に遺族年金を受給できないと判断された場合でも、DV被害に関する新たな書類の提出があれば、再度、遺族年金を請求できます。」と、さらっと一文掲載があり。令和になってから次々DV関連の要件緩和の通知が発出されておりますが、平成時代に不支給となった被害者にとっては人生を左右する一大事。当事者の目に届くことを願ってやみません。
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