傷病手当金の返還 | 年金相談オフィスKAJU|京都市南区の社会保険労務士事務所

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傷病手当金の返還

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こんにちは♪京都の女性社労士、年金相談オフィスKAJUの木村です。

傷病手当金と老齢年金の関係について、ご相談がありました。
ご夫婦ともに65歳超で、現在も厚生年金加入中。年金の受給権は満たしておられますが、未請求。お二方ともここ数年で傷病手当金の受給歴があり、年金請求によって傷病手当金の返還を求められることが気がかり、とのことでした。
傷病手当金が、老齢厚生年金(基礎年金もあれば、基礎も含む)と調整対象になるのは、傷病手当金の「退職後の継続給付」を受けている場合です。
また傷病手当金の返還には、5年の時効があります。
これに照らし合わせると、奥様のみ該当期間がありました。老齢の年金日額と比較して、傷病手当金日額の方が高く、そのまま請求すると老齢年金日額分は重複受給することになるので、その金額分を健康保険に返還する必要が生じます。これを何とか回避する方法はないか、とのこと。

65歳前の年金と、65歳以降の年金は別物

老齢の年金は、65歳を境に前半と後半に分けられ、全く別物です。
65歳前の特別支給の老齢厚生年金については、受取時期を遅らせることはできませんが、
幸い今回の傷病手当金との重複期間は65歳以降、66歳までのことでした。現在ご本人様はすでに67歳。
まず傷病手当金とは無関係である特別支給の老齢厚生年金について。本来60歳から支給されるところが、既に一部時効にかかっており一刻も早く請求することが必要で、即時ご請求することに。
(不本意にも、年金が時効によって消える方は珍しくありません)

特例的な繰下げみなし増額制度

次に傷病手当金と重複する65歳以降の年金請求について、2つの方法をご提案しました。
一つ目は、65歳以降の老齢厚生年金と老齢基礎年金、両方とも繰下げ請求(2年間繰り下げにより、16.8%増)すること。それによって傷病手当金との重複期間は、繰り下げの待期期間となり、実際年金を受給しておりませんので返還不要です。
(ただ繰下げ請求自体のメリット/デメリット(例えば長生きの必要性等)を了承できるかという問題はあります)
二つ目は、繰り下げない方法。傷病手当金の返還の時効を迎える5年経過後に、65歳からの本来請求をすることです。繰り下げ待期後、実際に請求する段階(71歳)で「繰下げ請求」か「65歳からの本来請求」かを選ぶことができます。
傷病手当金は日々時効を迎えていきますが、今回すべて時効を迎えるのは71歳ということになります。71歳時に、繰り下げではなく本来請求を選択した場合、年金は過去5年分遡及して、一括支給されます。65歳から66歳の1年間は5年以上経過したものとして、(R5年4月法改正前は)時効消滅するところを、現在は「特例的な繰り下げみなし増額制度」

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2023/r5_kurisage_kaisei.html

という新制度の適用により、この1年間を繰り下げしたものとみなし8.4%増額された年金額で、66歳以降71歳までの5年分を一括受給できます。本来時効で消えるところを制度的に繰り下げ扱い、単に時効消滅させることなくお特になりました。同時に傷病手当金との重複受給も回避、返還の必要が生じません。

(繰り下げみなし制度の適用には、S27年4月2日以降生まれの方、受給権の発生がH29年4月1日以降の方などの条件があります)

老齢の年金は人それぞれ

結局この方は繰り下げではなく、4年後71歳時に本来請求(+繰り下げみなし)することを選択されたのですが、もちろん71歳時に繰り下げ請求(50.4%増)することも可能です。
ただこれはこの方だからできたことで、「加給年金」が加算されるようなご主人であれば、同様の選択は難しかったと思います。
「加給年金」とは、年間39万前後の金額。20年以上勤務歴のある方に、条件に該当する配偶者がいた場合、一定期間加算されることがある家族手当ですが、加算の有無や期間については、ご夫婦の記録によって異なりますので一概には言えません。加給年金は繰下げによる増額対象ではありませんので、本体を繰り下げると、単に受け取りの機会を逸してしまうことになりかねません。
また年金を遡及受給すると、遡って各年度の所得が生じることがあり、それによって所得に基づくもの(国民健康保険料・介護保険料等、所得税・住民税等)に影響する場合があります。
年金は個人個人で状況が全く異なりますので、よくよく注意が必要です。



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