在職定時改定
令和4年4月の改正事項である「在職定時改定」で、実際に支給される日は令和4年12月15日です。
在職定時改定について改めて申し上げると、65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者について、毎年9月1日を基準日として、基準日の前月である8月までの記録でもって10月分からの年金額を再計算し、10月分11月分の支払い期である12月に受け取ることができるという制度です。在職・定時・改定と、改めて区切って読んで頂くと、制度を要約した名称になっております。
どこが良いのかイマイチ?という方に。65歳で年金額が決定されて以降、これまでは退職により厚生年金被保険者の資格を喪失するか、又は在職で70歳を迎えるまでは、老齢厚生年金の額は改定されませんでした。前者は退職時改定、後者は70歳改定といって、前回の決定から増えた記録をもとに改めて年金額を再計算することになっています。
年金は65歳で、65歳前月までの記録から計算した年金額を受け取る仕組みですが、65歳以降毎月毎月厚生年金保険料を納めても、それによる年金額の増額は、退職か70歳まではずっとお預け状態だったわけです。今後はこの1年働いて保険料を納めた成果を、毎年毎年受け取って頂けるように制度が変わりました。
在職老齢年金との関係
厚生年金に加入して働いておられると、在職老齢年金が適用されます。在職老齢年金とは、厚生年金に加入して給与や賞与(報酬)を一定額受けておられる方は、年金が調整(減額)されることがあるという仕組みです。在職老齢年金の計算のもとになる年金額も、前述の在職定時改定で毎年増額されていきます。在職老齢年金によって年金が一部停止(一部支給)の方であっても、今後は報酬が変わらなければ受け取る年金が少し増えていくことでしょう。
繰下げとの関係
在職定時改定の制度が出来たことによって誤解が増えると予想されるのは、在職中の方の繰り下げです。令和4年4月から、昭和27年4月2日以降の生年月日の方は、65歳以降に支給される年金をすぐに受け取らずに増額する目的で、これまでの70歳上限から、75歳まで最長10年間(最大84%)繰り下げが可能になりました。ご注意頂きたいのは、繰り下げの原資は65歳時に決定した年金額だということです。報酬が高いことで在職老齢年金の調整を受ける方については、まず在職老齢年金を適用した後の年金額ですので、全額停止の方はそもそも(厚生年金報酬比例部分について)増額される原資がないということになります。この誤解によって、70歳または引退時に想定外の現実に愕然とされる方はよくおられます。
ただここまでは改正前と変わりありませんが、新たに出来た在職定時改定との関係です。この制度ができたので、在職中に積み上げてきた記録でもって、繰り下げ原資が増えるように思われる方もおられるかもしれませんが、あくまで繰り下げの対象は65歳時に決定した年金額です。繰り下げを選択したということは、途中で毎月(毎年)受け取るという選択をしなかったということですから、在職定時改定制度は関係ないことになります。普通に受け取ることを選んだ方には毎年階段式に年金額が増加する制度に対して、何だかちょっと損したような気がするかもしれませんね。年金には他にも留意点はありますので、お気軽にご相談下さい。